(Q) ベンチャー企業における経理のあり方は?

(A) 外部報告に対する姿勢など経理のあり方は、戦略的に選択すべき問題である。

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――●制度会計と管理会計

 会計の目的には2つあります。ステークホルダーに業績を報告するためと、経営判断の資料とするための2つです。業績報告のための会計は制度会計と呼ばれ、経営判断のための会計は管理会計とも呼ばれます。一般に、経理は制度会計を基本に組み立て、必要に応じ管理会計をカバーすします。

 制度会計は、名前の示すとおり会計基準という「制度」に従うものです。粉飾を防ぎ、ステークホルダーを保護するためです。一方、管理会計は制度のような縛りはないから自由に構築して構いません。ということは、両者の間で「数字」が異なることもあり得ます(管理会計上の数字は厳しく、制度会計上の数字は甘くなるでしょう)。


――●経理に対する2つの姿勢

 制度会計は、企業規模によって適用される会計基準が異なります。公開会社や資本金の大きな(5億円以上)会社では、それぞれ証券取引法や商法の規制を受けます。これに対し、中小企業では制約を受けることは少なく、その分、会計のレベルはまちまちです。

 ここで、ベンチャー企業の経理に対する姿勢は大きく2つ考えられます。1つは、厳しい基準(場合によっては、不備のある現行の基準を超えるほどの)を採り、実態をオープンにすること。もうひとつは、緩い会計基準を状況に応じて「利用」し、情報をコントロールすること。

 どちらを選ぶかは、あくまで戦略の問題です。決して「正邪」の問題ではありません。

 自らの経営手腕や業績見通しに自信があるのなら、「積極的な経理」をした方が得策でしょう。実際、業績を毎月「マンスリー・レポート」にまとめて関係者に配布している会社もあります。信用が得られ、資金調達も容易に進むといいます。ベンチャー企業ならではのIR(Investers Relations)戦略です。

 一方、大半の中小企業は「消極的な経理」を採ります。業績不振時には、償却費や引当金を調整して利益を捻出するのが一般的でしょう。銀行に赤字の決算書を出せないためです。企業の存続を考えた場合、これも1つの立派な戦略です(もちろん架空売上の計上など、明らかな粉飾は非難されるべきですが)。

 ただ、この場合、制度会計と管理会計は峻別しなければいけません。外部報告用の決算書に化粧をしたとしても、それで経営判断をしてはいけません。気をつけなければならないのは、対外的に話をしているうちに外向きの数字を本当の数字と勘違いしてしまうことです。


――●会計基準とキャッシュフロー

 現在、業績評価の基準が従来の「利益」から「キャッシュフロー」に転換しつつあります。キャッシュフローは誤魔化しようがないので、キャッシュフロー計算書が「第1の財務諸表」になれば、粉飾も化粧も意味をなさなくなることでしょう。

 利益はキャッシュフローの内訳の1つに過ぎません。利益でしか自社や他社の業績を判断しない会社は、時として経営判断を誤り、粉飾や厚化粧にだまされます。

 キャッシュフローは現実の資金の増減ですから、会計基準に依存しません。制度会計はどうあれ、管理会計あるいは業績管理はキャッシュフローをベースにする必要があります。


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