貸倒れは、受取手形の不渡りというかたちでいきなり最終局面を迎えることもあります。しかし、実態としては支払遅延、手形ジャンプ(決済期限の延長)要請など、回収交渉の余地が残されるケースの方が多くあります。では、債権回収にあたって心得ておくべき点は一体何でしょうか。
――●回収方針の見極め
債権回収を進める上で、まずはっきりさせなければならないのは回収方針です。相手方の支払遅延の原因を特定し(貸し渋り・貸し剥がしの余波か、単なる放漫経営か、債権の焦げ付きか)、財務状況(個人財産を含む)を把握して債権の回収可能性を見極めます。
回収可能性がまったくない場合は、既に倒産状態なわけでしょうから深追いしても無駄です。先方が法的手続きに入ると、債権届出などの手続きが生じますが、手続きを弁護士に委託して費用を支払うくらいなら、債権放棄の書面を送った方が得策です。その方が税務上も有利です。
一方、回収可能性がある場合にポイントになるのは、先方との取引継続の是非です。財務状況が悪く、再建の見込みがない場合には、新規取引を打ち切って債権の早期回収を図るべくギリギリと交渉することになるでしょう。
逆に、資金難の原因や先方の交渉姿勢などから取引継続を判断すれば、回収のスパンは長めのものになるでしょう。もちろん、取引継続の際の条件は、現金決済(COD:Cash On Delivery)です。
――●債権回収をあきらめない
回収可能性があるにもかかわらず、債権回収を簡単にあきらめてしまう会社は殊のほか多くあります。
債権回収はたしかに手間もかかるし、また相手を「追い込む」場面もあるわけで、気が重い仕事です。更に、経理や営業担当者にしてみれば、「貸し倒れても自分の金じゃないから」と切迫感がないかも知れません。
しかし、貸倒れを許して苦しくなるのは自社の資金繰りです。少額でも社長自ら交渉に当たったりするなど、完全回収の方針を社内に浸透させることが必要でしょう。
――●不良債権の回収は「ババ抜き」と同じ
言葉は悪いですが、つかんでしまったババを誰かに引いてもらうしかないのです。
「ババ」を引いてもらう先としては、金融機関(公的機関を含む)や得意先の親類などが考えられます。このとき、一方的に攻め立てるよりも、一緒に資金調達の途を考えてあげる方が、交渉としては建設的・現実的です。実際、銀行を紹介して債権回収を実行している会社もあります。
――●場合によっては専門家の同席も
支払遅延している会社は、会社存続の瀬戸際に立たされています。その結果、経営者の中にはウサン臭い話で何とか煙に巻いて、その場をしのごうとする者も出てきます。
技術者出身の社長など、債権回収の経験がない場合には、交渉時に専門家に同席してもらった方がいいこともあります。弁護士でなくとも、顧問会計士・税理士でも構いません (但し、弁護士以外の人に同席してもらうときは、弁護士法との関係(非弁活動の禁止)に注意が必要です)。
――●感情的になるな・させるな
債権回収はまさに土壇場の交渉だけに、ともすればお互いに感情的になりかねません。たとえば、いくら債権者の立場にあるからといって、街金の追い込みのようなことをすれば、相手が反発して会社を倒産させることだってあり得ます(逆に、倒産に至るのを承知で、押さえた小切手を銀行に持ち込むパターンも考えられます)。
債権回収交渉の目的は、1日でも早く、1円でも多く債権を回収することです。倒産にまで追い込んでは元も子もありません。強硬な交渉は必要ですが、あくまで冷静な対応が大切です。