(Q) バランスシートの「資産」で注意すべき点は?

(A) 資産は、常に時価ベースで把握しなければならない。

(解説)1/2 1 2 [⇒next] [HOME]

 ここ数年来、「日本の決算書は信用できない」という批判が国の内外を問わず上がっています。日本の決算書を海外投資家向けに英訳するときには、丁寧にも、「グローバル・スタンダードとは異なる会計基準で作成されている」旨の注が施されるほどです。

 この不信の背景のひとつに、「日本のバランスシートは時価を反映していない」という点があります。


――●取得現主義と時価主義

 バランスシートのみならず、企業の取引を記録するときには、そのときの取引価格をもって記録することになっています。1億円で買った土地は、その後値上がりしようが値下がりしようが、バランスシート上は買ったときの値段、1億円で記録されるのです。

 これを「取得原価主義」といいます(なお、資産の帳簿上の価格を「簿価」といいます。取得原価主義の下では、「簿価=取得原価」となります)。

 一方、資産を時価ベースで評価・記録する方法を「時価主義」といいます。時価の根拠になるのは、債権であれば回収可能額、有価証券であれば市場価格、設備や不動産であれば収益還元価値です(収益還元価値とは、その物件から得られる将来のリターンをもとに評価した価値)。

 国際的には、資産の評価は取得原価から時価に移っています。日本ではようやくその導入スケジュールが固ま ったところです。

 しかも、日本企業は「持つ経営」を行ない、多くの資産を抱えているため、遅れた会計基準のインパクトが大きくなっています。日本企業は株式の持ち合いで有価証券を抱え、土地神話の名の下、本社・工場以外にも(社員寮など)不動産を抱えてきました。また、資産を抱える分、借金も多くなります。すべてはインフレ時代の産物でした。


――●「甘えの構造」

 市場は、資産の含み損や含み益の不透明さに不信感を抱いています。本業で利益が出ないときには、含み益のある資産を売却して決算を取り繕い、片や含み損の生じた資産は塩漬けにして損失を先送りする。バランスシートを経営のバッファーとして利用してきた結果、日本企業には「甘えの構造」がはびこってしまったのです。

(もっとも、「甘えの構造」は何もバランスシートに限ったことではなく、日本企業あるいは日本人ひとりひとりの精神性に深く根ざしたものです。日本におけるあらゆる構造改革は、この「甘えの構造」を改革することにほかなりません。)

 個人も企業も「市場価値」で評価される時代になりつつあります。当然、バランスシートの個々の資産も時価で把握しないことには、企業を誤った道に進ませることになってしまいます。

次ページに続く

△ トップページに戻る