――●原価企画とは
「かんばん方式」や「カイゼン」は、日本の製造業の強さを支える生産管理手法としてつとに有名です。これらは広く海外メーカーにも採用され、中にはシックスシグマなどとして欧米流にアレンジされたものが逆輸入されています。
これらほど知名度は高くありませんが、こうした事例はまだまだほかにもたくさんあります。原価企画もその1つです。原価企画とは、製品の企画・設計段階で、量産化した場合のことも視野に入れた「コストの作り込み」・「コストの設計」をする活動を指します。
カイゼンが、量産開始後に漸進的なコスト削減を実現するものだとすれば、原価企画は新製品の開発段階で大胆なコスト削減を目指すものです。
原価企画では、製品開発の節目節目で商品企画、設計、生産技術、購買などの関連部門が意見を交換し、部品の取付位置や材質など生産要素の1つ1つに関して、どうすれば量産時の製造コストを抑えられるかを検討していきます。
この原価企画が「日本的」なのは、関連部門が開発の初期段階から一緒に議論に参加する点です。欧米の伝統的な製品開発の進め方では、企画や設計、量産試作などの担当部署が開発のそれぞれのステージを受け持ち、相互に交流することはあまりありませんでした。
しかし、欧米でも関連部門が同時に関与することの意義が認識され、製品開発のステージをバラバラに扱うのではなく、「コンカレント」に(同時並行的に)管理するようになってきました(コンカレント・エンジニアリングと呼ばれます)。
――●製造コストはいつ決まるか
さて、この原価企画の背景にある考え方とは何でしょう。それは、「製造コストの8割、9割は製品の企画・設計段階で決まってしまう」という発想です。
製品開発の初期段階では、製品の機能や使用材料、構造や生産工法など、製造コストを決定する要因が確定してします。だから、この時点で製造コストの大枠が固まってしまうのです。
これは裏を返せば、量産段階に入ってからではコスト削減の努力にも限界があることを示しています。たとえば、後になって使用素材を変えればコストが大幅に低減できることが分かったとします。しかし、そのためには製造機械の取り替えも必要だとなれば、場合によっては割高だと分かっていても現状の製法を続けざるを得ないこともありえます。
更に、仮に設備に変更がいらないとしても、不用意に材質を変えると顧客の不信感を買うおそれもあります。
結局、製品開発後にできることは、歩留まりの改善など生産効率の向上に限られてしまいます。もちろん、こうしたカイゼン活動は重要なことですが、ドラスティックなコスト削減にまで直結するものとは言えません。
原価企画自体は、製造業に特有のマネジメント手法でしょう。しかし、コスト(費用)がいつの時点で決まるかを認識し、その時点でのマネジメント(意思決定)を慎重に行なうことは、すべての企業にとって極めて示唆に富むことだと言えるでしょう。