――●経理の人間は何故ウルサイのか?
唐突ですが、一般の人にとって経理の人間のイメージとはどういったものでしょう。思うに、「何かにつけウルサイ」というのが、多くの人から上がってくる声ではないでしょうか。
経費の精算をしようと思えば、「もっとちゃんと内容を書かないと精算できない」と言われ、何かを購入しようと思えば、「本当に投資価値があるのか」と詰問される。毎月、「予算に対して経費を使いすぎている」とか「売掛金を早く回収してこい」とか、とかく細かく後ろ向きなことばかり言ってくる。
では何故、経理の人間はかくも「ウルサイ」のでしょう。たしかに性格的にそういった人がいるのも事実です。しかし、多くの人は使命感をもって敢えて嫌われ役を引き受けています。会社のカネを預る立場として、会社を絶対に潰さないという使命感をもっています。
――●会社のカネ=他人のカネ
もはや死語かも知れませんが、高度成長期からバブル経済期にかけて、日本では「社用族」なるものが存在しました。接待と称して、飲み食いやゴルフ、あるいは旅行に興じる人たちです(筆者自身、事務所勤めをしていた頃は、人より多く領収書を回していた方なのでどうこう言える立場にはありませんが)。
果たしてこうした社用族にある感覚とは何でしょう。それは、「会社のカネだから」という意識です。もう少し丁寧に言えば、「会社のカネ=他人のカネ」という感覚です。自腹ではとても行くになれないところでも、会社のカネ(他人のカネ)だったら自由に行ける。自分の懐は痛まずに楽しめるのだから、会社のカネを利用しない手はない。
この「自分の懐が痛まない」ところが、会社のカネに対する金銭感覚を麻痺させる元凶です。一般社員は日常的に資金を管理する立場にはないので、経費をつかうことはあっても、その結果として資金が減っていく様を直接目の当たりにすることはありません。このため、「おカネをつかえば、おカネは減る」という、小学生でも分かる当たり前のことが実感できなくなってしまうのです。
――●資金管理は正当に評価されているか
この金銭感覚の麻痺が行き着くところは、「会社のカネは湯水の湧いてくるもの、必ず金庫にあるもの」という勘違いです。
経理部門にとっての最重要の仕事に資金繰りがあります。目先の資金繰りばかりでなく、3ヶ月先、1年先、3年先を見据え、間違っても資金ショートをきたさぬよう常に資金管理に目配りしています。資金繰りを間違えたら、即、会社は倒産なわけですから、非常にストレスのたまる仕事です(おそらく経験者以外の方には、このストレスは理解しくにいと思いますが)。
売上代金の回収だけで資金繰りを手当てできればいいのですが、そうした恵まれた会社は世間では少数派です。資金不足が予測される場合には、資金調達が必要になります。経理の人間が、不足資金をどこかから引っ張ってくることで会社の資金は回っているのです。
会社の資金は、決して湯水のように湧いてくるわけではありません。経理部門が資金管理をしているからこそ、常に「そこにある」のです。思うに、大半の会社では資金管理の仕事が正当に評価されていないように感じます。
かつて倒産の危機にさらされたときに、経理部門が主導的な役割を果たして資金難を乗り切った過去をもつ会社では、経理部門が社内で一目置かれている存在になるといいます。それまで一般社員には「見えなかった」仕事が、社内でその重要性を認知されるからでしょう。
経理担当者に「会社のカネ=他人のカネ」という感覚はありません。むしろ、「会社のカネ=自分のカネ」です(あるいは、自分のカネ以上に重要な存在でしょう)。もし経理の言うことを「ウルサイ」と感じることがあったら、是非その背後にある感覚の違いに思いを致してみて下さい。