(Q) 条件制約理論(TOC)とは?

(A) 最も弱い部分(制約条件)に着目し、そこを集中的に強化・改善することにより、最小の努力で最大の成果を上げようとするマネジメント手法。

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 読者の皆さんは、制約条件理論あるいはTOC(Theory of Constrains)という言葉をご存知でしょうか。コロンブスの卵のような単純な考え方ですが、その分使い勝手のいいマネジメント手法なので紹介していきましょう。

 制約条件理論(TOC)とはその名のとおり、企業活動の中で最も弱い部分(制約条件)に着目し、そこを集中的に強化・改善することにより、最小の努力で最大の成果を上げようとするマネジメント手法です。

 この理論は、イスラエルの物理学者ゴールドラットによって提唱されたものです。TOCは大きく分けて4つの領域へと発展を遂げたのですが、その原点は生産活動の改善手法にあります。

 簡単な例を出して考えてみましょう。今、A、B、C、3つの工程を経て製造される製品Xがあります。各工程の1日の生産能力は、工程Aが120個、工程Bが80個、工程Cが100個だとしましょう。このとき、工場全体の生産能力は1日あたり何個でしょう。

 答えは80個です。工程Aや工程Cでいくらたくさん生産しようと、工程Bを通過できるのは1日80個までなので、工場全体としては80個が生産能力の限度となります。

 このように、工場全体の生産能力は最も能力の低い工程の生産能力に制約されることになります。このケースでは、工程Bがこの工場にとっての「制約条件」になるわけです。

 このとき、工程Aや工程Cの生産能力をどんなに増強しても、制約条件である工程Bを改善しないかぎり、工場全体の生産能力は向上しません。裏を返せば、各工程に対する改善努力を工程Bに集中させれば、それだけで工場全体の生産能力がアップするわけです。

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 ここまでお読みになって、「そんなこと当たり前じゃないか」と思われた方も多くいらっしゃることでしょう。たしかにそのとおりです。しかし、この理論は多くの欧米企業にとっては「目からウロコ」だったのです。

 経営のパラダイムを概観するとき、産業革命以降、1970年代くらいまでは「専門化による部分最適」が1つのキーワードでした。同一規格の製品を大量生産・大量販売する時代だったので、経営における様々な機能を専門化して能率を上げることが企業の利益につながったわけです。

 ところが、社会経済が成熟し、それを受けて経営活動も複雑化してくると、それまでの部分最適が弊害をもたらし始めるようになりました(経済学でいうところの「合成の誤謬」)。

 たとえば事例のケースでは、工程Aの責任者は、自分の工程の生産性を最大限にしようと毎日120個の仕掛品(工程完了品)を製造することでしょう(何故なら工程Aの責任者は、その工程の生産性や操業度でもって業績評価されるでしょうから)。

 しかし、次工程である工程Bの生産能力は1日80個なのですから、これでは毎日40個(120個−80個)の仕掛品が、処理しきれずに工程Aと工程Bの間でたまっていってしまうことになります。

 こうして仕掛品がかさんでいくと、その分資金が寝ることになりますし、「作れば売れる」時代が終わった今、在庫の陳腐化リスクが高まるだけです。更にここで工程Aの責任者が「政治力」をもっていて、工程Aの設備増強予算を獲得するのに成功したら、事態はもっと深刻になります。

 制約条件理論は、経営パラダイムが部分最適から全体最適へと転換する中で登場した、行き過ぎた専門化へのアンチテーゼだったのです。

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