◆ 第1編 「儲けの計算」を学ぶ前に

 ◆ §2 ひとりひとりが「儲け」を意識する必要性

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 「儲けの計算」を身につけるにあたっては、そもそも対象である「儲け」に対する問題意識をもつことが必要です。今回は「儲け」に対する認識をより明確なものにしていきましょう。

――●問題意識の明確化

 「自分の行動が、あるいは会社の意思決定が、果たして本当に儲けに結びつくのかどうか」――こうした疑問や問題意識が「儲けの計算」を学ぶ原点だと思います。こうした意識なしに会計や財務をいくら学んでも、それはただの座学を収めたに過ぎません。「儲け」に対する意識が高まってはじめて、その計算を本当に身につけようとするインセンティブがはたらくのです。

 さてこうした点で、社員のひとりひとりにまで「儲け」の意識が浸透している会社が日本でどれだけあるでしょうか。個人の実感としては、浸透していると断言できる企業はかなり少数のような気がします。

 大変失礼ながら、雇用情勢が厳しい現在でも、まだまだサラリーマンの大半は給料を「もらう」という感覚で捉えているのではないでしょうか(多分に自営業者のひがみかも知れませんが)。

 「もはや給料は、黙って口を開けてもらえるのを待っている時代ではない。自分が稼いだ儲けの配分として受け取るべきものだ。」――こうした視点での人事制度改革が多くの企業で進んでいます。成果主義型人事と呼ばれるものです。

 時代は確実に、ビジネスマン(ウーマン)のひとりひとりが「儲け」を意識せざるを得ない状況へと動いているのです。

 

――●大きな「儲かる仕組み」の崩壊

 では何故、ひとりひとりが「儲け」を意識せざるを得ない状況になってきたのでしょう。その時代背景を、人事コンサルタントの高橋俊介氏の所説を借りながら探ってきましょう。

 氏は、企業が変革を成功させるには、まずこれまでの「儲かる仕組み」が既に崩壊したことを認識した上で、前提条件からの見直しが必要になると説いています。

 これまでの「儲かる仕組み」とは何でしょう。それは、本社中枢の限られた人たちがシナリオつくり、その他大勢の社員がそれに基づいて、会社の都合に合わせて商品を生産販売する、いわば中央集権的で「大きな儲かる仕組み」でした。

 しかし、規制緩和や技術革新、市場の成熟、変化スピードの増大などがこれまでの「儲かる仕組み」を崩壊させてしまいました。もはやマスマーケティング、マスプロダクションの時代ではなくなってしまったのです。

 これに代わって、今求められている「儲かる仕組み」とは次のようなものです。すなわち、顧客と現場で直接向き合う人たちが、顧客の都合に合わせて付加価値を創出する、いわば現場分散的で「小さな儲かる仕組み」です(詳しくは、『「自由と自己責任」のマネジメント』、ダイヤモンド社)。

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 「大きな儲かる仕組み」の中では、大半の社員は与えられたシナリオどおりに動くことを求められ、特に「儲け」を意識する必要はありませんでした。ところが、「小さな儲かる仕組み」の時代にあっては、社員のひとりひとりが「儲け」を生み出す存在になることを求められているのです(これに呼応して、成果主義的な報酬制度が導入されてきたわけです)。

 この結果、社員のひとりひとりにまで「儲けの計算」が必要になってきたのです。

次ページに続く▽

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