◆ 第1編 「儲けの計算」を学ぶ前に

 ◆ §4 そもそも「儲け」とは

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 ここまで「儲け」という言葉を繰り返しつかってきましたが、そもそも「儲け」とは一体何でしょう。そろそろ「本題」に近づいていきましょう。

――●「儲け」の基本式

 唐突ですが、皆さんに問題です。AさんがB社の株を500円で1万株買いました。その後、B社株は急騰し、2000円になったところでB社株を売却しました。果たして、Aさんの「儲け」はいくらでしょう。

 答えは1500万円(2000万円−500万円)です。企業の会計がすべてこれほど単純であれば、会計の入門書など鼻から存在しないことでしょう(但し、このケースでも厳密に言えば、売買手数料や所得税などを考慮した儲けの計算も考えられます)。

 さて上の例で、2000万円や500万円という金額はそれぞれ何を意味するのでしょう。2000万円は回収した金額であり、500万円はもともと投資した金額です。したがって「儲け」の基本は、いくら使っていくら回収できたか、すなわち、

  儲け = 回収 − 投資

であると言えます。設例で言えば、500万円の投資に対し、2000万円の回収に成功したので、1500万円の「儲け」があがったとなるわけです。


――●何が「儲けの計算」を複雑にしているのか

 上述したように、「儲けの計算」は本来、非常にシンプルなものです。では、いったい何故、企業における「儲けの計算」となると急に複雑になってしまうのでしょう。

 要因はいろいろと考えられるでしょう。ただ、元をたどれば、「企業には様々な利害関係者(ステークホルダー)が存在している」という一点に辿り着きます。

 「儲けの計算」の基本式で示したように、儲けは回収を前提とした概念です。ここで、回収したいと考えている人(利害関係者)が複数いる場合には、回収と分配はコインの裏表の関係になります。

 なぜなら、ある決まった大きさの「儲け」というパイを、複数のステークホルダーで切り分ける(分配する)必要があるからです。そして、それぞれ切り分けられた分が各自にとっての回収であり、回収額と投資額との差額がその人にとっての「儲け」になるのです。

 ということは、利害関係者の数だけ「儲けの計算」が存在する、と言うことができます。何故なら、それぞれの利害関係者にとって重要なのは自分の取り分であり、もともとのパイの大きさは2次的な関心事になるからです。直接関心があるのは、自分の取り分があるかどうかであり、大事なのは自分の番に回ってくるときのパイの大きさなのです。

 このように「儲け」は誰の立場で計算するかによって、計算が違ってきます。具体的に会計を学ぶ前に是非ご理解いただきたいのは、儲けは非常に多義的な概念だという点です。

 予備知識のある方なら、「儲けとは?」と訊かれると、決算書(損益計算書)上の「利益」とお答えになることでしょう。しかし、それは数ある「儲け」の概念の1つに過ぎません(「利益」自体もたくさんありますが)。

 ここまで手垢のついた「利益」という術語を避け、「儲け」という俗な言葉をつかってきたのにはこうしたわけもあります。

 一旦すべてを白紙に戻して、原点に立ち返って考えてみましょう。

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