イオンの株価が22日、約25年ぶりにイトーヨーカ堂の株価を上回った。機関投資家の保有比率が高いヨーカ堂株は企業年金の代行返上売りなどが重しになっている。
ただ、歴史的な株価逆転は、既存店の地道な収益性よりも、イオンの成長性が投資家に評価されたことを示しているとも言える。
ヨーカ堂とイオンの経営指標
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区分 |
指 標 |
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ヨーカ堂 |
イオン |
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収益性 |
売上高営業利益率 |
(%) |
5.7 |
4.3 |
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商品粗利率(単独ベース) |
(%) |
31.0 |
26.4 |
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売上高販管比率(単独ベース) |
(%) |
26.6 |
28.9 |
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1u当たり売上高 |
(千円) |
769 |
517 |
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財務指標 |
総資産回転率 |
(回) |
1.47 |
1.53 |
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棚卸資産回転率 |
(回) |
36.07 |
14.77 |
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有利子負債残高 |
(億円) |
3,142 |
6,963 |
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デットエクイティレシオ |
(倍) |
0.29 |
1.63 |
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株価指標 |
外国人持株比率 |
(%) |
19.3 |
19.3 |
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時価総額 |
(億円) |
11,326 |
9,065 |
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PER |
(倍) |
21.1 |
17.6 |
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アナリスト評価(注) |
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7 |
2 |
(注) 「アナリスト評価」は主要証券会社10社のうち、「買い」の投資判断の数
スーパー2強の2003年2月期決算を見ると、収益力ではヨーカ堂がイオンを上回っている。財務の安定性もヨーカ堂が勝る。実質無借金のヨーカ堂に対して、イオンは約7000億円の連結有利子負債を抱える。
一方、各指標の改善スピードはイオンに分がある。ヨーカ堂の売上高営業利益率はピークの1991年2月期からほぼ一貫して低下しているが、同期間にイオンはじりじりと上昇している。
外国人投資家の持株比率は前期比に両社とも19.3%と初めて並んだ。市場では、「外国人にはウォルマート流の販売戦略を進めるイオンの方が理解しやすい」という見方がある。
■まず、株価に関する議論で注意すべき点について確認しておこう。しばしば今回の記事のようにライバル会社の株価比較が行なわれるが、単純な株価比較はあまり意味をなさない。
たとえば、A社の株価が100円で、B社の株が1億円だとする。このときB社はA社の100万倍「いい会社」なのだろうか?単純に考えれば、そうだ。
しかし、このときA社は発行済み株式数が1億株、B社の株式数は1株だとしたらどうだろう。A社の時価総額(株価×発行済み株式数)は100億円、一方、B社はのそれは1億円に過ぎない。会社の正しい価値は、会社全体の価値(株式の時価総額)で考える必要がある。
パイ1切れの大きさ(1株当たりの価値=株価)はパイの切り方如何でいかようにもなる。大事なのはパイ全体の大きさだ。人間は思考を省略したがる。株価は新聞に出ているが、株数は自分で調べないと分からない。だから、つい株価だけでものを考えがちだ。財務の世界にはこのほかにも錯覚が問題となる例がある。注意が必要だ。
■ヨーカ堂とイオンの話に戻すと、時価総額で見ればヨーカ堂の方がまだイオンより2割以上大きい。したがって、ヨーカ堂の方が「いい会社」と言える。ただ、率直な印象で言えばヨーカ堂とイオンの差が2割程度というのはずいぶんと縮まったように思える。
両社の差が縮まったのはヨーカ堂の株価下落が大きな要因だ。記事にあるように代行返上売りなどもあって、ヨーカ堂の株価はこの1年で半値以下になった。
株価の決定要因は大きく分けて2つある。その企業の収益力をはじめとするファンダメンタルズと需給要因だ。中長期的に見れば、株価は企業のファンダメンタルズを反映する。が、一方で株式は売り手と買い手があって取引が成立するものだから、一時的にせよ売り手が多くなれば株価は下落する。
ヨーカ堂の株価下落は需給要因によるところが大きいとされている。ちなみに、ヨーカ堂はイオンに株価逆転された翌日(23日)、初の自社株買いを行なうと表明した。これで株価は反転し、逆転現象は解消されることだろう (もちろん株価については責任は持てません。念のため)。
■もうひとつの株価決定要因であるファンダメンタルズについても考えてみよう。
記事の評価では、投資家がヨーカ堂の堅実な収益性よりもイオンの成長性を評価した結果、株価の逆転が生じたとしている。
企業の価値は、平たく言えばその企業が将来にわたって稼ぎ出す儲けの総和が基礎となる。儲かる会社の価値は高いし、儲からない会社の価値は低い。
現時点を見ると、絶対額で見ても収益性で見てもヨーカ堂の方が収益力は高い(儲けは多い)。しかし、下表のとおり両社の営業利益(連結ベース)を傾向で見ると、ヨーカ堂が減少傾向にあるのに対して 、イオンは積極的な買収の効果もあり、年々順調に利益を伸ばしている。
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1998/2 |
1999/2 |
2000/2 |
2001/2 |
2002/2 |
2003/2 |
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ヨーカ堂 |
2,198億円 |
2,138億円 |
1,777億円 |
1,653億円 |
1,609億円 |
1,783億円 |
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イオン |
509億円 |
696億円 |
712億円 |
920億円 |
1,192億円 |
1,321億円 |
(注)ヨーカ堂は米国会計基準に基づく。日本基準による2003/2期営業利益は2,013億円
株価の逆転現象は業績の傾向を素直に反映したものといえる。イオンの成長が今後も続き、将来的にイオンの方がヨーカ堂よりも利益を上げると投資家が判断すれば、時価総額でも逆転現象が生じる日が来るかも知れない。
■さて、ヨーカ堂とイオンを比較するときに必ず論点に上がるのが有利子負債だ。ヨーカ堂には帳簿上3,000億円以上の有利子負債があるが、それを上回るキャッシュを有しており、実質無借金だ。一方、イオンは7,000億円の有利子負債を抱える。企業価値を考える際にもこの有利子負債の問題は当然絡んでくる。
企業価値の大きな構成要素は、上述した収益力ともうひとつ資本コストだ。いくら本業で稼いでも資本コストが高ければ、儲けは残らず、株主の期待に応えることはできない。
資本コストを下げるには負債を有効活用せよと言われる。負債の方が株式よりも資本コストが低いからだ。特に近年のように超低金利が続く状況だと負債活用の意義は大きい。イオンの株価が堅調なのも低金利が背景になっている(記事によれば、イオンは店舗展開をリース方式によっているため、低金利のメリットをさらに享受しているという)。
ひとことで言えば、イオンは現在のところ低利の負債活用による拡大路線が順回転をもたらしている。一方で、これが逆回転(金利上昇、成長ストップ)を始めたときのリスクも懸念されている。ポイントになるのは、金利上昇に負けない収益力の強化とオーバーストアや財務バランスに配慮した拡大戦略のブレーキのかけ方と言えるだろう。
■株価は企業の将来の姿を織り込む。健全な成長が見込まれるなら、堅実な会社よりも相対的に株価の評価は高くなる。