§2資本コストの計算(〜Continued)
――●株主資本の資本コスト
株主資本の資本コストには、2つの構成要素があります。それは、配当と株式の値上がり益です。もし、あなたが100万円を投資して、5万円の配当(インカム・ゲイン)と、10万円の売却益(キャピタル・ゲイン)を手にしたとすれば、あなたは合わせて15%の運用に成功したことになります。
株主は、両者の構成はともかく、何%かの投資利回りを期待して、その会社の株式を購入しているわけです。株主資本の資本コストとは、この「何%の利回りを期待されているか」を指します。
この期待利回りは、CAPM(キャップエム:Capital Asset Pricing
Model:資本資産価格形成モデル)という理論によって定式化されています。CAPMのベースにあるのは、「投資家は、リスクが高ければ求めるリターンも高くなる」という考え方です。
たとえば今、ともに利回り3%の日本国債とベンチャー企業の社債があったとします。あなたは、「どちらを買いますか?」と訊かれたら、きっと「国債」と答えるはずでしょう。紙屑になるリスクの高い社債に対しては、国債よりも十分に高い利回りを期待できなければ投資しないはずです。
CAPMによる資本コストは、次の算式で計算されます。
Rf:リスクフリー・レート(非危険利子率)
Rm:株式市場の期待収益率
Rm−Rf:市場のリスク・プレミアム
β:ベータ値
算式の意味を説明していきましょう。まず、リスクフリー・レートとは、文字どおりリスクのない投資対象から得られる利回りのことです。一般に10年物国債の利回りが使われます。
式の右項は、株式というリスクが高い投資対象に対するリスク・プレミアムです。リスクが高いことによる、期待利回りの上乗せ分と考えればいいでしょう。リスク・プレミアムは、まず株式市場全体のリスク・プレミアムを測定し、それと個別株式との関連性(β値)を求めることによって算出されます。
リスク・プレミアムは、何を基準とするかによっていろいろな数字がありますが、一般に20〜30年単位での平均株価の上昇率などが採用されます(10年単位の数字を使うと、バブル崩壊後の現状では、利回りがマイナスという異常値になりかねません)。
次にβ値は何かというと、その会社の株価と市場全体の株価の動きとの相関関係のことです。その会社の株価が市場全体とまったく同じ動きをすればβは1、ハイテク産業など業績の変動が激しい業種ではβは1を超え、電力など安定業種では株価の動きも安定しているので、ベータは1未満になります。
なお、β値は企業毎に過去の株価と市場の動きのトレンドから統計的に算出され、一般に直近5年間のデータが用いられます。
こうして計算した負債・株主資本それぞれの資本コストを基にして、はじめに説明したWACCを求めます。