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(Q)「売上が増えると資金繰りが苦しくなる」とは、どういうことか?

 

(A)一般に仕入の支払いの方が売上代金の回収に先行するため、売上が増えると先行する支払いも増えて、資金が不足するということ。

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 「売上が増えると資金繰りが苦しくなる」――感覚的にはピンと来ないでしょう。まさに資金繰りの落とし穴です。逆に言えば、こういった落とし穴があるからこそ、資金繰りを理解することが必要になってくるのです。


――●収支ズレ

 それでは、下の設例を参照しながら、このしくみを説明していきましょう。下図は、製造業をモデルに、原材料の仕入から売上代金回収までの、一連の取引を時間軸で捉えたものです。

 

 取引サイクルは、大きく言って仕入代金の支払と売上代金の回収の2系統に分かれます。

 まず支払いの方は、原材料を仕入れてから決済期限(2ヵ月後)に支払いが行なわれています。こちらはこれでサイクル終了です。

 一方、入金の方はいくつかのステップを経ることになります。はじめに、原材料を製品にするための製造期間が必要とされます。次に、製品が完成してもそれが販売されるには、何がしかの時間がかかります。そして、製品が販売されても即入金があるわけではなく、決済条件に基づいて然るべき期間をおいて回収が実現します。

 上の例では、製造に1ヶ月、その後販売に1ヶ月、さらに販売から回収まで2ヶ月かかり、結局、材料仕入れの時点からカウントすると、4ヶ月後にようやく代金が回収されることになります。

 以上をまとめると、取引サイクルの中で支払までの猶予期間は2ヶ月、一方、回収までに必要な期間は4ヶ月です。したがって、4ヶ月−2ヶ月の2か月、支払いの方が入金よりも先行してしまうことになります。

 この支払いのタイミングと入金のタイミングの差のことを、「収支ズレ」といいます。売上が増えると資金繰りが苦しくなるのは、この収支ズレが存在するためです。売上が増えて取引のボリュームが増加するときには、その分、先行する支払の金額も多くなるわけです。

 最悪のケース、先行する支払代金を賄うことができなければ、企業は業績は順調でありながら倒産の憂き目に遭ってしまいます(この倒産パターンを「売上倒産」といいます)。資金繰りの本には、「勘定合って銭足らず」という言葉が必ず登場しますが、これはこうしたケースを説明した言葉です。


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